二百十日

9月1日は二百十日。律儀にも、台風11号が関東、東北沿岸を窺うという展開になりました。そうでなくても風の強いことで知られる銚子は、その直撃を受けて最大瞬間風速36.5メートルを記録したそうです。銚子の周辺に林立する風力発電の風車は、その時どうなったのでしょうか。すごいスピードで回っていたのか、あまりの強風に回転をストップしていたのか、気になるところです。

 

農業が日本の中心的な産業だったころには誰でも知っていた、八十八夜とか二百十日という言葉も、今では人々が耳にすることはほとんどなくなりました。温暖化の影響からか、台風の発生など季節の変化が早まっていて、昔からある格言が役に立たなくなっているのかもしれません。それでも、私が去る4月の中ごろにかぼちゃの苗を庭に植えているのを見た右隣のご隠居が、

           「田舎のお袋がかぼちゃを植えるのは、八十八夜を過ぎてから、と言っていたよ。」

と、教えてくれたのですが、時すでに遅し。かぼちゃは大きく育つことはありませんでした。そう言えば左隣のおばあちゃんは去年の年末に、

           「冬至根と言ってね、冬至のころの芽は丈夫に育つのよ。」

と、菊の脇芽を両手にいっぱい持ってきてくれました。

 

季節の変化に対応するということでは、子供の頃うるさく言われたのが、

           「お盆を過ぎたら、海に入るな。」

です。日中はまだ真夏の暑さで、夏休みの子供たちは海に入りたがるのですが、海水温は急に下がり、海はクラゲだらけになるのでした。はるか南の海で発生する台風は、それ自体が日本を直撃しなくても、危険な土用波をはるばると送ってきました。

 

立秋はテレビのニュースでかならずコメントされますが、8月7日ですから、まだ夏もたけなわで、秋の気配が感じられるにはほど遠い。一方、「暑さ寒さも彼岸まで」となると、ほんとうに生活実感に沿っているという感じがします。土から離れ、高層ビルで仕事をする現代人が共感できる季節格言はこんなものに限られてしまうのでしょうか。

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