電気風呂

「腱鞘炎になりまして」とか、「五十肩らしい」という人がいるたびに、「それなら電気風呂がおすすめ」と言うのですが、誰も本気にしてくれたためしがありません。ウッカリ話しに乗って感電死でもしてはたいへんと、みなさん敬遠するのでしょう。

 

そもそも、電気風呂なるものは未だ社会的に認知されているものではないらしい。例えば国語辞典で「電気風呂」を引いてみると、何も出てこない。ウェブ上の大百科事典で検索しても、そんな項目は存在しないのです。Wikipediaに至っては、「その項目を新しく設定しますか」、と聞かれてしまいます。

 

しかし、ちかごろ流行のスーパー銭湯では、電気風呂設備を備えたものが結構多いように思います。弱い電流の流れる電極に穴のあいたプラスチックのカバーがしてあって、そこに患部を近づけるとビリビリと電気を感じます。慣れてくるとなかなか気持ちの良いものです。しかし、一つの浴場に一人分か二人分しかない設備なのに、長蛇の裸の列ができているわけでもないところを見ると、やはり敬遠する人が多いのでしょう。「心臓病の方、外傷のある方はご遠慮ください」などと書いてあるのが、よけい入浴客を怖がらせているのでしょうか。

 

かくいう私は以前、五十肩を電気風呂で快癒して以来の大ファンです。腱鞘炎気味だな、と思ったら電気風呂、ヘルペスにやられて顔面神経麻痺になったときも、電気風呂に顔を半分潜らせてリハビリの効果を上げることができました。残念でならないのは、この手の安直な健康法で効果の著しいものが、医者、鍼灸師、マッサージ師など、プロフェッショナルの人々に敬遠されたり、貶されたりすることです。まあ、それも致し方ないことかも知れません。なにしろ、せいぜい480円とか800円のスーパー銭湯に1週間も通えば難治の故障が直ってしまうのですから。

Comments are closed.