広告業界でも人員整理の動きが目立つようになりました。まだ外資系企業が中心ですが。外資系の代理店では業績に即して社員の数を調整する傾向があるので、何とも言えませんが、聞き及ぶリストラのスケールから判断すると、何か根本的なことが起きている、と言う気がします。企業合併、提携、外注先の締め付けなども平行して行われています。
数年前から世界のマスコミ業界で起きていることは、伝統を誇る著名企業の売却や合併です。何か大きな構造変化がこの世界を揺り動かしているに違いありません。これまでのマスコミは、新聞にしてもテレビにしても、情報流通手段が大型化して新規参入が困難な状態が続いてきました。流通手段が寡占化したから、コンテンツ提供の総合化が行われ、巨大産業にのし上がってきました。
現在進行中の現象は、それの解体化ではないでしょうか。なにしろ、これまで巨大投資が必要で新規参入できなかった情報流通手段がタダになってしまったのです。これの意味するところは大きい。巨大輪転機も空にそびえるテレビ等も無用の長物になってしまうのです。独占的資産が、やっかいな負の資産になったらたいへんです。
誰でもタダで情報を発信できる時代が来ています。変化は不景気のせいで起きているのではなく、根本的にモードチェンジが起きていると考えるべきです。消費者はニュースから連載小説、料理レシピから旅行案内までなんでもありの情報総合商社から、不要なものを含めて一括購入しなくても、欲しいものをバラ買いできる時代になった、と言えます。
さて、マスコミがこうなってくると、広告はどうなるか。広告はマスコミに寄生して大きくなってきました。情報流通が解体すると、広告もそれに見合った寄生虫になってゆかねばなりません。大きな宿主には大きな寄生虫の生存が許されますが、解体した宿主にどう寄生すれば良いのでしょうか。情報流通の形態がどうなってゆくか、見守っているうちにジリ貧になっているのが現在の広告業と言えないでしょうか。