海難

 灘と名のつく海域が幾つかあります。今年の始めは冬の玄界灘で漁船の遭難が相次ぎました。東シナ海で操業した帰りと思われる底引き網漁船が、網を下ろしているわけでもないのに横波を受けていきなり沈んだりしています。大寒波が来ると、風と波でよほど操船の難しい海域なのでしょう。

 

若いころ、遠州灘のあたりで海水浴をしようと思って海岸沿いに車を走らせたことがありますが、どこまで行っても遊泳禁止地区でびっくりしたことを思い出します。地図で見ると泳ぐのに格好の地形のように見えるのですが、きっと離岸流とかいう危険な海流が海岸近くに来ているのでしょう。それで思い出すのは、ジョン万次郎とか音吉という江戸時代の船乗りが、このあたりから遠くアメリカ海岸まで漂流したことです。結果として彼らはアメリカ文化を日本に持ち込むことになるのですが。

 

そう言えば銚子沖も海難事故の多いところです。銚子漁港の近くに、海を見はるかす塚があり、「千人塚」と言って数多くの遭難者の霊を祀っています。北と南から砂浜が海にせり出した独特の地形で、嵐でもないのに三角波が立ち、いきなり船が真っ逆さまに沈んでしまうようなことがあるらしい。話に聞くバミューダの魔の海域みたいなものでしょう。その北は鹿島灘へと続きますが、ここも離岸流で、海岸線はほとんど遊泳禁止です。鹿島灘の北の端が漁港として有名な大洗、那珂湊。そこに至る長~い砂浜は不毛の海岸だったけれども、最近ではハマグリの養殖が盛んになっています。

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