読みました:法月綸太郎『生首に聞いてみろ』

若い頃に本邦ミステリ界隈では新本格ブームというものがありまして(私がハマったときは「第三の波」と呼ばれる世代が登場しは始めた頃)、中でもミステリにハマるきっかけとなった法月綸太郎氏の作品が大好物でございました。大学卒論のテーマにも選んだくらいの影響を受けた作家です。法月綸太郎という作家は寡作で、兼業ならまだしも専業作家なのでどうやって生活しているのだろうか、とも気になってしまうくらい余り作品が世に出ない方です(もっと寡作な人もおりますが)。エラリイ・クイーンの影響を受けた作家で、作風を語ろうとすると「後期クイーン問題」というややこしい問題を挙げざるを得ないのですが長くなるので割愛します。要は悩める探偵、ということです。

では今回読み終えた『生首に聞いてみろ』。おどろおどろしいタイトルですが、都筑道夫の『なめくじに聞いてみろ』というアクション小説のパロディかと思われます。つっこんだ内容はタイトルにあるように首の話ではあるのですが、ネタバレになるので割愛。

この作品は元々廃刊(休刊?)した「KADOKAWAミステリ」という雑誌で連載されていたもので、筆の速いとは言えない作者が連載やって大丈夫か、とハラハラしていたことを思い出します。連載中は読まなかったのですが、2004年に単行本になった際にすぐに買って読もうと思いましたが思いとどまりました。その前に出た長編は1994年で、10年から長編を発表していなかったので、今読んでしまったら次の長編はまた10年後となるのではないか、と思ったためです。短編集の発表は長編より多いので、氏の作品をまったく読めないというわけではないのですが、長編は長編として楽しみたいもの。勿体無かったのでこの作品はこれまで読めなかったのですが、単行本出てから5年経ったこともあり読んでしまいました。派手さはないのですが端正なミステリでした。

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