山手線ドア上のデジタル広告、それにウェブ広告に新しく現れたディスプレイ型広告。これらが新しい表現形態を発達させつつあることに、折に触れて言及してきました。視覚要素の逐次的提示という共通項をもっており、時間媒体なんですが、そうかと言ってテレビCMとも違う。テレビCMがほとんど映画の文法を踏襲しているのに対して、これらサイネージ型ともいうべき表現スタイルは、別の文法に基づいています。そう、どちらかというと、絵本や紙芝居の文法です。先日、絵本作家の知人から作品を見せてもらって、ハタと気が付きました。
しかも、絵本や紙芝居を超えた手法を開発しつつあります。というべきは、ビジュアル要素に文字を多用することです。たとえば、どこでどんな催しをやっていますよ、といった文字情報を逐次的に見せることで、見る側の逐次的理解とシンクロしさせています。ここで、日本語が表意文字であることがずいぶん有利に働きます。なにしろ、パッとみてパッと分かってしますのですから。
日本人は、この表意文字を感情的、情緒的表現に使うことに長じてきました。古池や蛙飛び込む水の音、など、やはり漢字かな混じりでなくてはいけません。パッと見て、パッと情景が浮かびます。翻訳書などで、何回読み直しても意味が分からない漢字かな混じり文もありますが、それは別として、パッと分かる文章というのは、ポスター向き、サイネージ向きです。これを逐次提示されたらイヤでも言わんとすることが通じてしまいます。
と、考えているうちに、またまた「ハタ」と気が付きました。この手法って、多くの人たちがパワーポイントを使ったプレゼンテーションで、長年にわたって腕を磨いてきた逐次的提示の方法と軌を一にしているんですね。ところで、昨日はパチンコ屋さんのテレビCMで、ページを4-5枚めくる形が現れたので、「あっ、技術開発の逆流だ」と笑ってしまいました。