この前の「広告の対流通デモンストレーション効果」の項に付け加えたいことが一つあります。どこで読んだか、あるいはどこかで聞いたか、忘れましたが、あるとき、松下幸之助翁が「うちの広告はナショナルチェーンストアのご主人が見てくれればそれでええ」と言われたそうです。まさに広告の対流通デモンストレーション効果です。
テレビ番組「水戸黄門」を何十年間も単独スポンサーしたのも、電器屋のオッサンにはこれに勝るものはない、という信念があったのでしょうか。「♪明るいナショナル、♪明るいナショナル、♪ラジオ、テレビ何でも揃う」というCMソングも消費者にナショナルチェーンストアの品揃えが良いことを言っているように見えながら、実はお店のオッサンに「品揃えをしっかりしてね」と言っていたと理解すると、理屈が合ってきます。
街で人気者のオジサンがやっている小売店を特約店にすれば、品物が売れる。小売店に配貨されていない品物は売れない。店頭の在庫としてあれば、オジサンが何とか売ってきます。経営の神様、松下幸之助翁はこの広告の副次的効果が当時の松下電器にとってはメインの目的だったことを指摘されたわけです。広告がいわゆるディストリビューションの強化に役立つことがよく分かります。しかし、10年後に主要媒体となっているだろうウェブは、広告の副次的効果をメインの目的として使うほど強力に発揮できるでしょうか。