地産地消(千産千消)

東京に住んでいる人は、千葉の野菜や魚がおいしいことをあまり知りません。それはこれらの食材が東京の市場に出回らないからでしょう。千葉県には豊かな農地、近海漁場、遠洋漁業の基地など、山海の幸を提供してくれる舞台がそろっています。千葉県の人たちはその山海の珍味を東京に提供したりしないで、自分たちでムシャムシャと食べて、知らん顔をしているのです。むしろ、そんなことは意識していないのが、本当のところでしょう。

 

千葉県は千葉都民と呼ばれるほどホワイトカラーの層が厚く、地元で取れるおいしいものを地元で消費する好循環を生み出しているのです。生産と消費の循環を県内で完結させる、こんな好条件に恵まれた県は、関東ではほかには神奈川でしょうか。埼玉県では農産物が豊富に取れても、お魚に手が届かないでしょう。冷蔵・冷凍技術、コールドチェーンの発達で、昔は生魚など食べたことの無い地方でも、食生活に多様な魚料理を取り入れるようになっています。けれども、獲れたての新鮮なお魚を、獲れた近くで食べるのは、おいしさが全然ちがうんですね。スーパーでお魚を買ってきて食べている東京の人は、千葉にくるとびっくり仰天するでしょう。

 

生来、カツオというものを好みませんでした。カツオには独特の生臭みがあって、口に合わない、と思っていたのです。ところが、銚子でカツオを食べて考えを変えざるを得ませんでした。まず、千葉以北で獲れるカツオは、戻りカツオでなくとも脂の乗りが良いようです。そして、それをタタキでなく、刺身で食べるのが千葉流なのですが、これがめっぽうおいしい。そして、安い。

 

ところで、山紫水明というか、山から清流が流れ出て、その伏流水が豊富なところでおいしい日本酒ができる、という先入観をもっていました。つまり、新潟、福島、山形、秋田などが代表的な日本酒の産地だ、というイメージです。千葉の日本酒など眼中に無かったのですが、いつか、魚を煮るためにお酒が必要になり、名も知らない地酒を買ったのです。何気なく、口に含んでびっくりしましたね。うーむ、おいしいのです。これも、千葉の人が地元のおいしいものを地元で消費して、知らん顔をしているもう一つの例です。ずるい、というか、うらやましい限りです。

“team m”の皆さんに食関連のテーマで書いてくれるよう、お願いしました。食に関わる仕事をしている若者グループです。哺乳類の食、人類の食、日本人にとっての食、消費者にとっての食、職業人としての食など、など。さて、どんな話が出るか。長い間ひとつのテーマを追いかけていれば、だんだん深みが出てくるのではない、と楽しみです。

One Response to “地産地消(千産千消)”

  1. […] 千産千消、産地と消費地に反応してみます。 […]